(text: tupiniquim)
今回のWEBマガジンではコーヒーに焦点を当て、映画の一幕にコーヒーが登場する『逆転夫婦!?』をピックアップしました。
ある日突然、妻と夫の体が入れ替わってしまったら!?
そんな夫婦のドタバタ劇を描いた『逆転夫婦!?』。ブラジル映画界を代表する2大俳優が共演し、2005年のブラジル国内映画最高観客動員数をたたき出した大ヒットコメディです。
この作品では、体が入れ替わってしまった夫婦が、周囲に気付かれないよう普段通りの生活を送ろうと、悪戦奮闘する姿が観客の笑いを誘うのですが、カギとなるシーンの一つにこんな朝の風景があります。
夫のクラウディアは、朝から濃いコーヒーをブラックで飲む、大のコーヒー好き。一方、ヘルシー重視の妻のエレナは、フレッシュなフルーツジュースが手放せません。体が入れ替わってしまったある朝、いつものようにクラウディオがコーヒーを手に取りました。ただ体が入れ替わっているために、傍目には、エレナがいつも飲まないコーヒーを手にしたように見えます。そのエレナがコーヒーを飲み出したことに家政婦も娘もただただ驚くばかり。
クラウディオは、履き慣れないハイヒールに四苦八苦するばかりか、朝のコーヒー一杯も諦めなければならなかったのでした。コーヒー愛好家にはクラウディオの無念が伝わる一コマです。
また、昨年までの上映作品にもコーヒーは日常生活の一部として登場します。
例えば、2006年度上映の 『コピーオペレーター』。主人公が、思いを寄せる少女と話しながらコーヒーに山のように砂糖をいれるシーンは、さすがに「入れすぎ!」と驚いてしまうものですが、ブラジルでは決しておかしくない量だとか。また、昨年上映された 『スエリーの青空』では、家に遊びに来たお客様にコーヒーを勧める場面があります。どんなに、暑い地域でもアイスコーヒーではなく、熱いコーヒーを飲むのですね。
ブラジルのコーヒー畑 |
さて、これまでブラジルの映画やドラマにさりげなく登場するコーヒー。ブラジルと言えば、コーヒー大国として知られています。
でも、知っていましたか?ブラジルで生産される最高品質の珈琲豆は、はるか彼方の日本にしっかりと届けられているのです。
ブラジルに旅行してお土産にコーヒーを買って帰ろうとした人であれば、現地の店員から茶目っ気たっぷりに、こんな風に言われた経験がきっとあるはず。
「ブラジル産の最高級のコーヒーは日本に輸出されているのに、なんでわざわざここで買うんだい?」これは一体どういうことだと不思議に思われる方もいらっしゃるはず。
それにはこんな理由がありました。

テストペーパーの上で欠点数を数える |
世界最大のコーヒー生産国であるブラジルには、“珈琲鑑定士”なるものが存在します。サントス商工会議所が認定する資格で、ポルトガル語で“クラシフィカドール”と呼ばれる鑑定士は、輸出される前の珈琲豆の品質を厳しく審査しています。その品質管理はさすがプロフェッショナル。輸出用のサンプル豆に含まれる“欠点豆”の割合を把握するだけでなく、カップテストという鑑定方法で、香りと味覚を8段階に等級付けし、厳選された珈琲豆だけが海を渡って日本に送られるという徹底ぶり。私たちがブラジルに居なくとも、高水準のおいしいコーヒーを飲める背景にはこんな秘密があったのですね。

旧サントスコーヒー取引所の時計台 |
また2008年は、日本からブラジルへ、最初の移民船が旅立ってから100年が経つ節目の年です。100年前、サンパウロ州サントス市の港に降り立った移民の多くが、コーヒー農園で働き、ブラジルのコーヒー産業に貢献したと言われています。私たちの手に届く珈琲豆一粒一粒に刻まれた人々の情熱とドラマが今にも見えてきそうですね。
ところで、ブラジル人にとっていかにコーヒーが身近な存在か、ブラジル人のおしゃべりに耳を傾けてみるとすぐわかります。ポルトガル語では、「ちょっと休憩しない?」と言いたい時に“Vamos tomar um café?(ヴァーモス トマール ウン カフェ)”と表現します。
直訳すると、「ちょっとコーヒー飲まない?」ですが、必ずしもコーヒーを飲むわけではなく、「ひと休みしない?」という意味だそうです。まさに日本語の「ちょっとお茶しない?」ですよね。日本人にとってのお茶のように、ブラジル人の生活になくてはならないコーヒー。そしていつしか、日本人の生活にも広く深く染み渡り愛されているコーヒー。今年の映画祭ではラインアップ作品上映の合間、午後3時のひとときに“カフェ・タイム”を設け、ミュージック・クリップや短編を無料上映いたします。
長編作品を観終わった後は、さあ、このカフェ・タイムで、“Vamos tomar um café?”
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